澗口さんの新規開業講座


成功する理容室開業について


Ⅰ.新規開業について~サロンコンセプトの確立~

  • サロンコンセプト
  • Who メインターゲットは誰なのか
  • What 何を売るのか
  • How どのように集客するのか
  • Ⅱ.成功する理容室開業

  • 必要な『時間』という概念
  • 女性集客の意味
  • まとめ


  • Ⅰ.新規開業について~サロンコンセプトの確立~

    サロンコンセプト

    開業計画を立てるときに一番大事なのは「サロンコンセプト」です。このコンセプトをしっかり考えることは成功するために不可欠といえるでしょう。5W1H(Why,What,Who,Where,When,How)を深く考えずに開業してしまう開業者が多く見受けられます。
    特に、コンセプトの中で「誰に(Who)、何を(What)、そしてどうやって(How)」の3つは重要です。


    Who メインターゲットは誰なのか

    「誰に」(Who)とは、メインターゲットのことです。
    理容室開業予定者の中でよく聞く回答が「近所の住んでいるお客様で、小さな子供からお年寄りの方まで全てがターゲットです。できれば男性がいいです。」のようなものです。
    近所に住んでいる人、これは正解です。しかし若い人が好むスタイルとご年配の人が好むスタイルは違っているはずです。ご年配ばかりのお客様がいるサロンには、当然若い人は来店されていないはずです。
    メインターゲットを絞り、そのお客様の集客を図るためのプロモーション(店舗、メニュー、広告)を考え、お客様が満足するものを提供する。サロンの強みに反応するお客様をさらに集客、リピートさせて初めて成功することになるはずです。
    メインターゲットを絞れず、特徴のない店は理美容室に限らず、流行っていません。 「お客様は誰でもいい」は、「誰も来なくてもいい」と言っているのと同じことになります。


    「顧客を絞ると来てくれる客数が減る」と単純に考えている方もいらっしゃるかと思いますが、新規開業サロンを安定的に売上を上げ続けるサロンにするためには、新規で獲得した顧客をリピートさせ、リピート率を上げることが不可欠です。そのためには、顧客満足度を上げていく必要があります。
    全ての年代、顧客層のお客様を満足させることは不可能です。逆に不満足度を上げてしまい、失客するだけでなく悪い評判が立ってしまう危険性も高まります。年齢、性別、ライフスタイルなど共通した好み(ニーズ)によりターゲットを絞り込んだほうが満足度を上げやすく、流行るサロンになりやすいのです。


    What 何を売るのか

    これは、メニューの作り方と言ってもいいでしょう。
    理容室のメニュー構成は美容室と比べて少ないメニューで構成されています。これまでの理容室は「総合調髪」を主にしたメニュー構成をあまり変えていません。これではなかなか魅力のあるものにはなっていないはずです。
    では単純にメニュー数を増やせばいいのかといえばそうではありません。何がサロンの売りメニューなのかがもっと分かりにくくなってしまいます。メニューを増やすことは重要ですが、そこにはメニュー構成上の仕組みがいるのです。


    良くない(悪い)事例としては、メニューを増やす際に、総合調髪を頂点としたカットメニューを作ってしまっている場合です。シェービングを外して、カットだけの価格を作成したケースです。これでは、なかなか売上単価は上がりません。周りの理容室よりも少しでも安いメニューを作らないと集客できないと考えた結果だとは理解できますが、やはり成功しない開業に陥ってしまいます。
    「近所より価格が安い」という魅力だけで集客した場合、もし近くに「もっと安い」店ができたら顧客はそちらへ逃げてしまいます。客数が減ったのでさらに価格を下げるという悪循環に陥っていくことになりかねません。
    小さな規模の開業サロンは絶対に避けなければなりません。価格競争は大きなサロンが圧倒的に有利な戦略なのです。同じ土俵で戦っては必ず負けます。



    メニュー例と問題点



    1.3つの価格帯のメニューがある場合、松竹梅の法則とも言われているもので、大体3つの真ん中を選ぶという人間の心理(マーケティング用語では、「極端性回避の法則」)高いものを、安いものも選択するのを避けたいと言う心理です。この3つのメニューしかない場合は、平均客単価は限りなく真ん中の3,000円に近い数値になります。
    2.「安い」ことを前面に出すことにより、価格のみに反応する顧客を多く集めることになります。また、別の店でもっと「安い」価格の店ができたら、そっちへ移動してしまう危険性が高くなります。このメニューの場合、シェービングの価値がますます低下していき、メニューから消えていく運命にもなりかねません。
    3.「安い」が当たり前と思っている顧客層が多くなってきて、付加価値メニューの提案を受け入れる顧客層が減ってしまい、その提案が上手くいかなくなります。「そんなメニューうちのお客がやるはずがない」という言葉も真実味を帯びてくる結果となります。


    最近、メニューに洒落たネーミングをつけているサロンも増えてきました。お客様の興味が湧きそうな名前は思わず「どんなことしてくれるの?」と聞いてみたくなります。これはとても重要なことです。これから理容室の開業を目指す人にはメニューの名前にも工夫が欲しいものです。


    成功する開業とは、サロンの価値を伝えることのできるメニューを作り、そのメニューを選択する顧客数を増やしていくことなのです。


    How どのように集客するのか

    チラシを作成し、新聞折り込みで配布したとしても、本当に男性の新規集客は難しいようです。ターゲットを絞り、メニューもしっかり考えて作成しても集客が上手くいっていない理容室が多いのも事実です。
    しかし、男性は集客は難しいが、リピートはしやすいと言われていますし、データからもその傾向が読み取れます。
    理容室を開業する年代は20代後半から30代前半が大半でしょう。そうした場合メインターゲットになるのが30代を中心とする20代~40代ということになるはずです。


    ここは年代という観点から考えてみましょう。
    30代の前半では、半数近くの男性は美容室に行っていると考えられます。この年代は男性顧客であっても「美容室」との戦いかもしれません。20代の男性顧客の場合、それ以上の割合になるかもしれません。
    この年代がターゲットの場合の戦略は店創りであり、『男性専科の美容室のような理容室』展開戦略でしょう。ここで求められるのは美容室のようなメニュー展開とスタイル提案力、美容室に近いヘアデザインが要求されます。そこに理容室でしかできないメニューの価値を伝えることと、この年代が求めはじめている潜在ニーズの「ケア」も加えていくことも必要でしょう。


    30代後半から40代前半では、以前は美容室に通っていた経験があるが、少しずつ行きづらくなってきた層が増えてきている可能性があります。
    ここでは美容室との戦いとはなりませんが、近所にある従来の理容室とは一線を引いた、少なくともカッコいい店創りが集客のために必要です。また年代に応じたヘアデザインとこの年代が気にし始めるケアメニュー(頭皮、肌ケア)メニューを盛り込むことが必要になります。


    ターゲットの男性にケアを啓蒙するメニュー作りと、サロンで解決できるというアピールをどう盛り込むのかが重要です。
    また、男性顧客の一番のリピート理由が「リラックスして眠れるメニュー」だったというのもいくつかのサロンの成功事例から分かっていますので、リラックスできるメニューということも忘れてはいけません。