澗口さんの新規開業講座


成功する理容室開業について


Ⅱ 成功する理容室開業

5W1Hの話を通して述べてきたように、開業前の準備をしっかり行なっていくことが重要です。開業がゴールだと考えがちですが、開業してからいかに順調に軌道に乗せるのかが一番難しい問題です。


今は大きな設備投資をしても、失敗してしまうサロンも散見されるようになってきました。 これは、「経営」というマインドが伴っていないからだと考えておく必要があります。


サロン経営が失敗してしまう原因の1つは「集客」です。
お店を出しても新規客が少ない、せっかく獲得した顧客が定着せず、あるいはターゲットの設定を誤ったことで悪い評判が立ち、ますます集客が難しくなり新規客も固定化しない。
もう1つは「客単価」です。
単価をあげるためのメニューの展開のをしっかり考えていないことにあります。


【売上】=【客数】×【客単価】 です。
両方を上げることができなければ売上が上がるはずがないのです。


必要な『時間』という概念

最近取材をしたサロンには、施術時間が書かれているメニュー表がありした。
『時間』の価値という概念がまだまだ不足しているのが今の業界の現状ではないでしょうか。
低料金店では『時間』が顧客にとってもお店を選ぶ重要な要素になってきているのです。終了時間が予想できること。メニューの内容が想像できること。価格だけでなく、施術時間が短いことで「忙しいから」という「安いから行ったのではなく、時間がなかったから」という納得できる理由ができるのです。


同じ施術内容だったら、所要時間は短い方がいいというのが顧客心理かもしれません。
施術者が納得する時間と顧客が納得する時間には大きなズレが生まれてきている可能性があります。 技術を提供する側では、丁寧に自分が納得する技術を提供するために時間は関係ないと考えてしまいがちですが、これがお客様にとって「長すぎる」ことになってしまいます。丁寧とは「きっちり揃えること」ではなく、お客様の気持ちになって考えてあげることであり、じつは求めているものとギャップがあるケースも少なくありません。「整えられすぎるのが嫌だから理容室に行かない」と考える若い人は多いと聞きます。
施術時間が短いことのもう1つの利点は、できるだけ短い時間で施術を行なうことで、プラスのメニューを組み入れることが可能になります。時間当たりの生産性を上げることができるのです。


メニュー表の施術時間明記にはいくつかの意味があります。
1.時間生産性
時間生産性とは、サロンの売上を上げるためには、できるだけ短い時間で高い金額を得ることの価値です。
サロンにおいては10分1000円が付加価値メニューの基準です。これ以下のサロンが圧倒的に多いのが実情でしょう。土日に顧客が集中しているサロンでは、この時間生産性が高いサロンほど売上が上がります。売上を上げていくには、単に顧客数をこなすだけでなく、顧客が集中する時間の生産性(1時間でいくら稼げるのか)を把握する必要があります。
2.顧客側が施術終了時間を想像できる安心感の提供
初めて来店された顧客にとっては、何時に施術が終わるのかが判断できることも重要です。予約システムを導入しているサロンでは、開始時間と終了時間を保証することがあり、そこを曖昧にしているサロンは、顧客が不信感を持ってしまうことにもなりかねません。予定時間を明示することで、その人が付加価値メニューを選択するかどうかを判断できるようになります。
3.顧客が価格で選択しているのか、時間で選択しているのかがサロンが判断できる
顧客によっては、時間そのものに価値をおいている人もいます。顧客のその日、その時のタイミングでサロンの選択を変えている人も存在します。顧客1人ひとり、そのタイミングで判断基準が異なりますし、施術の価値をどこに置くかも違っているはずです。顧客情報では、その人の時間感覚を知っておく、確認することが重要になるのです。


女性集客の意味

女性の集客をどのように考えるのか。これは新規サロン(改装サロン)と既存サロン(非改装サロン)とではまた戦略が違います。


既存サロンでは、売上を何とか上げるためにレディスシェービングやエステに取り組もうとしています。でも、理容店でしかできないメニューと技術があれば何とかなるという精神では、なかなか上手くいかないのではないでしょうか。


上手くいかなかった原因を追究せずに、「こんなのはダメだ的な発言」をされることがあります。
お客様は女性です。女性の心理をしっかり把握しておかなくてはなりません。レディスシェービングが成功しているサロンから考えてみましょう。


上記のようなことがほぼフル装備されて、さらに、「シェービング等の技術が好きである。いいものは誰かに伝えていきたい」と考える積極的マインドを備えていることも大きな成功要因でしょう。
既存店で上手くいっていない場合、上記のポイントに何か課題があると考えてみる必要があります。


実は新規開業時の女性獲得の意味は、単純に売上を上げるということではなく、ほかにもメリットがあることを知っておく必要があります。
1つ目は、来店時間の価値です。女性は男性と比べて平日に来店される可能性が高く、平日の稼働率を上げる要素があることです。
2つ目が、ここが結構大事なポイントですが、女性の「口コミ」が活用できることです。
美容室の新規開業時、女性の「口コミ」による紹介で新規集客ができるサロンと出来ていないサロンではその後の売上に大きく影響を与えるほど「口コミ」は重要なポイントなのです。
理容室のレディスシェービングで月70万から100万あげているサロンでは、間違いなく「口コミ」が起きているはずです。


女性⇒女性という口コミ以外に理容室にとって重要な「口コミ」は、女性⇒男性という「口コミ」を発生させることができるということです。理容室の開業で一番難しいのは、実は男性の集客なのです。
新規開業であっても、思ったほど男性が集客できないのは、ターゲット顧客の半分がこれまで美容室を選んでいて理容室に行ったことがない男性であると考えなくてはなりません。一般的な理容室空間には反応しない顧客層と考えられます。そんなターゲット顧客の心をつかむ何かがお店に表現されていないと集客がうまくできません。


結構男性集客に成功しているサロンでは、「女性からの口コミ」が活用されているようです。新規のお客様に来店の理由を聞いたら、実は『奥さんから「いいサロンあるから行って来たら」と言われ来店した』男性が多いのです。
一度も来店されたことがない女性からの紹介も多いそうです。来店されたことのない女性からの口コミでさえ、有効なのですから、まして来店された女性の場合、キッカケさえあれば、かなりの確率でご主人へ紹介し、来店が発生することになります。
何度も書きましたが、今行っている美容室になんとなく居心地が悪い思いを感じ始めた30代~40代の男性多くは、奥様の一言がサロンを替わる動機になっているということです。この年代の男性は「サロン探し」をしている層が多く存在していると考えて店創りを行なう必要があります。


「男性の口コミ」は「女性の口コミ」より弱いと言われています。地域活動にあまり参加していない、会社と家だけを往復している男性では「口コミ」は発生しにくいというのがその理由の1つでした。
しかし、「男性の口コミ」が全く起こらないかというとそうではありません。Web上では、Twitterなどの書き込みにより性別に関わらず起こってきているようです。
「口コミ」は、同じような考え方、同じような好みなどの人間関係内で起こっています。同じ趣味を持つ人たちが集まる場所、例えば、同じスポーツクラブに通う男性同士では充分起こりえます。そういったライフスタイルなどを把握しておくこともこれからは重要な集客のポイントなのかもしれません。


まとめ

理容室を開業するにあたり一番大事なことは、「成功するとはどういうことなのか?」
具体的なイメージを持つと同時に、売上目標など数値化した目標を具体的に持つことです。今までお話してきたとおり、ご自分の集めたい顧客を明確にし、確実に集客を行なうことです。今はただ待っているだけでは「集客」はできません。
お客様を集めるために、価格を低くすることも危険です。『価格』だけに魅力を感じる顧客を集めるだけであり、そうした人は他にもっと安い『価格』を打ち出したお店に簡単に移動してしまいます。
成功する新規開業サロンとは、ご自分が必要とする顧客を確実に集める【集客計画】を持ち、さらにターゲット顧客に必要とされるメニューを提供し、発展させていく【メニュー戦略】も併せ持つことです。今までと違うことを行なう勇気が必要とされています。
今までと同じことをしていく方が楽なのですが、こうしていく限り理容室の未来は暗いものになっていきます。新規開業を目指す皆さんは、実は大きな成功のチャンスを掴むことができるはずです。ご自身でしっかり考えて行動することです。
新規開業のターゲット顧客は20代~40代前半の男性です。こうしたお客様は、間違いなく「自分にあったサロンを探している人たち」です。


【集客計画】とは、新規開業を成功させるために、理容・美容問わず非常に重要な要素です。
ターゲットを集客することを第一の目標におき、ターゲットが本当に求めているものをしっかり掴み、メニュー展開します。そのためには、単に男性集客だけでなく、女性、子供からの『紹介』を活用していく集客も有効なのです。
多くの新規開業サロンを分析したPOSデータでは、『新規集客3要素』というものがあります。これが以下の3つです。
  • ① 店舗力(店が新しく、魅力があること)
  • ② 広告宣伝(自サロンの『強み』のプロモーション)
  • ③ 紹介(『強み』が紹介を発生させる)

  • 今回の話の中心である『紹介』は、実は成功しているサロンほど高い傾向を示しています。


    【メニュー戦略】とは、男性の客単価5000円超えを目指す戦略です。当初からこの客単価を目指して全てのお客様に一律5000円超えを目標とするのではなく、ここを目指して20~30%の男性顧客にそれを越えてお金を使ってもらえるメニューを作りだし、提供していくことなのです。
    新規開業サロンで男性単価を上げていくためにはこうした「いいお客様」を新規獲得することと、サロンで提供するメニューによって男性顧客を変えていくことなのです。
    こうした男性の心理を上手く捕まえているサロンは、間違いなく『勝ち組』サロンになっています。
    皆さんも成功を目指して、一歩新しい道を踏み出していきましょう。